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瑞筆 ー スイスで綴るエッセイ 2009年編
日ごろの生活の中でふと心をよぎったこと、とりとめのない思いなどをそのまま書き綴りました。
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2009年1月3日
2009年は風邪とともに明けた。おかげでこの数日はほとんど味覚なし。おせちもお雑煮も味がわからない。でもいいんだ。どちらにしても、おせちもお雑煮も食べないのだから。
とはいえ、連休でおまけに大晦日、お正月ともなれば、さすがに少しご馳走があったりする。シャンペンを開けたり、ちょっといいワインを買ったりする。でも、どれも味がわからな~い。久し振りに食べた伊勢うどんも、友人の手作りのマロンプリンも、夫自慢の豚肉のグリルも、何もかも無味。鼻のかみ過ぎで耳もあまりよく聞こえない。これらの感覚がまたいつか戻ることを願う2009年のお正月。そして、私から風邪を映された夫はしきりに昨年の暑いお正月を懐かしんでいる。
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2009年2月9日
去年の暮れにいただいた翻訳の仕事が2つ、長引き長引きしていたが、ようやく目途がつきそうだ。 一つは久々の日独の翻訳のお仕事で、独日とは別の楽しさを味わわせていただいた。私のドイツ語でいいのだろうか、という疑問は常につきまとうけれど、クライアントが承諾してくださっているのだから、できる限りのことをやらせていただくしかない。
もう一つはチューリヒの広告代理店からいただいたお仕事で、日本のイラストレーターとの間の橋渡し。彼はおそらくかなり有名なイラストレーターなのだと思うけれど、すごく腰が低くてとても仕事がやりやすい。広告代理店の方も同じ。お互いに相手を気遣い、最高の仕事をしようとしている。なんだか橋渡しが「私なんかでスミマセン」という感じだ。
勤め出して一年と少し経った会社のお仕事も、年初から結構大きなイベントが続いた。勤め先はネット上でスイスの情報やニュースを流している国営報道機関。ここで翻訳をしたり記事を書いたりするほかにビデオも作らせてもらっているのだが、これがなかなか楽しい。これまで特にビデオ制作に夢中になってきたわけではないので、腕の方はまだまだ。でも、ここでもやさしい協力者のみなさんのおかげで、それなりの作品に仕上がっていると思う。編集の方の力もとても大きい。いつも感謝してます、ほんとうに。
今年はローザンヌ国際バレエコンクールに参加するある女の子のビデオを作ることになったので、1月半ばからその準備も加わった。ほぼ1週間ローザンヌに留まりつつ、翻訳の仕事を進めたり、次の大イベントの準備を進めたり。家に帰れば帰ったでコンピュータに向かいっぱなしなので、夫はだんだん私が燃え尽き症候群にでもかかりはしないかと心配になってきたよう。最近はコンピュータをつけると怒る。でも、もうあと少し。本の翻訳の方ももう出版社に提出して、やるべきことは残りわずかだし。
…とホッと一息つこうとすると、また何かやることが現れてくるんだけどね。でも、それはきっと幸せなことなんだと思う。明日はもうすでに終わった「次の大イベント」のビデオ編集。うまくできるかなあ…。 |
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2009年3月29日
3年ぶりに帰省した。今回は夫と2人。まず私が1週間早く帰国して、その後、関空に到着した夫をピックアップし、そのまま電車で九州旅行。一番の目的は指宿の砂蒸し風呂。ちょっと奮発して海辺の素敵なホテルに宿泊した。結構暖かかったので、寝るときは窓を開け、その手前の障子を閉めて、寄せ返す波の音を聞きながら眠りについた。何という幸せ!まったく、私が日本に着いたときは北風が強くて暖房なしではいられないほど寒かったのに、九州を周っている間中、気温は20度くらいあり、半袖で歩き回れるほどだった。博多ラーメン、柳川川下り、砂蒸し風呂に特攻隊記念館、そして桜もちらほらの熊本城。夫もまずまず満足してくれたようでほっ。
柳川の川下り。いい陽気でした 山桜は満開。熊本城
今回は実家に合わせて10日くらい滞在したが、東京滞在中や九州旅行の行き帰りに10件以上のアポを取っていた。いつも会う友人のほかに、最近仕事を通じて知り合った人やン十年ぶりに会う人も。さまざまな職種の人の興味深い話をたくさん聞くことができた。みなさま、お世話になりました。
今度の日本滞在で思ったことは、日本の社会ってやっぱりとてもサービスが良い。みんな親切。マナーをきちんと守る。一つ辟易したことは、過剰サービスとも思える電車の中などのアナウンス。「電車とホームの間が大きく開いている」ことを注意するのはまだしも「お子様連れの方は手を引いて」とか「ドアの開閉に注意」とか、黙っていてはならぬとばかり繰り返されるアナウンスを聞いているとうんざりする。こんなアナウンスを四六時中聞いていたら、日本人は自分で考えることをしなくなるのじゃないかしら。人に言われたことしかやらない、注意しない。これってとっても危ないことだと思うけれど?どこかで誰かが操作しているんじゃないかしら・・・と、ある人に言ったら「そんなことができるくらいなら日本もまだたいしたもんだ」と返された。でも、そんな不安を抱くくらい無意味なアナウンスが多いと思う。
わがふるさと、伊勢志摩はやっぱり美しい 木曜日の上野公園。平日なのにすごい人。
もともとは久し振りに満開の桜を見たいと思って3月に帰国を決めたのだけれど、満開にはタッチの差で早すぎた。今週末くらいには桜も見ごろになったんじゃないかなあ。でもまあ、あちこちで美しい風景を見られたし、おいしい和食を食べたし、今から思うと別世界にいたよう。なんだかんだ言っても、今回は日本の良さをいつもにも増して実感した。まあ、日常生活とは少し違う日々だったからなんだろうけど。明日から仕事。さあて、気分を入れ替えなくちゃ。 |
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2009年4月4日
モグリの一周忌は日本にいた。夫が日本に発つ日だったので「前日でもいいから、絶対にお墓参りに行ってキャンドルに火を灯してきてね!」と何度も頼んでおいた。夫はきちんとその約束を果たし、モグリのお墓参りに行ってくれた。
半年くらい前から、彼はもう私と一緒にお墓参りに行きたがらなくなっていたのだけれど、日本から帰って来ると「早くモグリのお墓参りしなくちゃね」と言う。ほっほぉ~。変わったもんだ。 と言いつつ、結局、そのとき着ていた部屋着のまま外に出るのはイヤで、だからといって着替えるのも面倒くさい。ということで、やっぱり私一人で帰国のお知らせに行くことになった。外が暗くなったあと、仕事部屋の窓から赤い小さな光がチラチラしているのを見ると、何となくホッとする。ヨーロッパの猫は異様に体が大きいので、「あんまり大きくならないでね」と言った私のお願いに応えてくれ、モグリはほかの猫と比べるとずいぶん小柄だった。その小さなモグリがそこにいるような気がする。赤い色に心が温かくなる。
3月最後の日、仕事から帰って来ると、モグリのお墓の前に新しい春の花の鉢植えが供えられていた。一年経ってもまだモグリのことを思ってくれている人がいる。そう思うと、他人事(猫事)ながらとてもうれしい。たぶん、モグリをとてもかわいがってくれていた近所の青年だと思うのだけれど。今日は冬中モグリのお墓を見守ってくれていた鉢植えを家に持ち帰り、もう1つ新しい春の花を添えた。 |
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2009年5月30日
たしか、先週の木曜日だった。夜遅く仕事から帰る道、いつものようにモグリのお墓に目をやると、ない!モグリのお墓が消えている!まさか…。しばらく周囲の草むらを目で探したが暗くてわからない。翌日、昼間にもう一度行って見る。やっぱりない。赤いキャンドル入れが草むらの中に横倒しになっていた。
ショックはあまりなかった。いろんな人が通る歩道の脇にお墓を立てたら、ひょっとしてそれを不快に思う人もいるかもしれないとずっと思っていたから。これまではモグリのことを思ってくれる人の気配ばかりを感じていたけれど、モグリがいなくなって14ヶ月、「もうそろそろ終わりにしたら?」と思う人がいても不思議ではない。
そう思うと、「そっか。そろそろ次の段階に移る時期なのかな」とあきらめがつく。月命日には家の中でも何かできる。でも、いまでもお墓のあとに残った細長いくぼみに切花を置いていってくれる人がいる。
どこの誰が何のために、あるいはどうして持っていったのか… |
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2009年7月11日
次の翻訳書の原稿を日本に送ってほっとしたと思うや、あっという間にまた再校ゲラが手元に届いた。少し余裕が出てきたと思って、10月から再開するつもりの通信教育の教科書を読み始めたり、5~6年前の誕生日に夫に買ってもらったスイス人作家シリーズをやっと手に取ったりしていたけれど、なんとなくまた少しあわただしい生活に戻りそうな気配。
そうこうしているうちに、世の中はすっかり夏。とはいえ、この1週間は雨の多い肌寒い日が続いている。木曜日はSimply Redの野外コンサートに出かけた。頭上は一面雲に覆われている。いっとき青空が広がったが、雨もぱらついたりするすごく不安定な空模様。それに寒い!たぶん気温は15度前後くらいだったのではないだろうか。でも、コンサート中は雨もなく、2曲目くらいからもう総立ち状態。会場はディスコと化すーところまではいかないが、みんな心地よさそうにリズムに体を揺らしていた。
去年のSealも良かったが、Simply Redはさすがベテラン~といった感じ。スリーピースに身を包んで舞台に現れたときはちょっとびっくりした。こんな衣装に身を包んだシンガーの舞台なんて、これまで観たことがなかったのだもの。ギターのアジア人ぽい男性はなが~いきれいな髪をしている。ときどきその髪の毛をばっさばっさと振り回す。「モンゴル人?」と言う夫に「日本人でもおかしくないよ」と応対していたら、やっぱり日本人だった。これもオドロキ。鈴木賢司という方。世界の舞台で活躍しているミュージシャンがいるって、なんとなく誇らしい。
昨晩は久しぶりにろう者に混じって楽しい時間を過ごしてきた。ろうのセルフヘルプ団体「Sichtbar」が「寿司の夕べ」を催すということで、友人一人を誘ってお手伝いにはせ参じたのだ。午後2時から10時半くらいまでほぼ立ちっぱなしで、コシヒカリ5キロをお寿司にした。リーダーは「Sichtbar」の経営者。もう1人の「板前さん」、彼の義理の姉と二人で以前お寿司のコースへ行ったことがあるという。彼の方はかなりの通のようで、腕前もなかなかだった。前日に日本食品店へ買い出しに行ったのだけれど、そこで私は「お味噌汁係」と「ひじき係」に任命された。ひじきなんて、みんな食べるのかなあ…と懸念顔の私をよそに、彼は「何でも試してみなくちゃ!」とヒジョーに明るい。そう、彼らはよく「試してみよう」と言う。自分たちの権利を得ようとスイスの各言語圏が一つにまとまり、最近、スイスのろう世界はすごく飛躍しているような気がする。
私たちはほとんどキッチンにこもりっきりだったので、お客さんの反応はあまりよくわからなかったけれど、最後にみんなの前で紹介されたときには暖かい拍手をいただいた。食器洗い係や会計係の人たちも常に笑顔でジョークを飛ばしまくる。合計4人の「板前さん」は、それほど細かく担当を話し合ったわけでもないのにそれぞれ仕事を見つけて、不思議なことにきちんとお寿司が出来上がっていく。まあ、巻き寿司の中身が予定と違ったり、忘れたりしたものもあったけどね。そんな細かいことは誰も気にしないのですーと、私は信じている。 |
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2009年8月26日
そうこうしているうちに世の中、夏もそろそろ終盤。 スイスの夏は本当に短い。でも、短いのはきっとスイスの夏だけではないのだろう。人の一生ってやっぱりちょっと短そう。最近は一日一日を大切に過ごそうと特に意識しているのだけど、ふと気がつくとまた1週間が過ぎてしまっている。その間にいろんなことをやっているはずなのに、満足感や達成感よりも時間の経つ速さに驚くことの方が多い。
…といつも同じことばかり言っていても仕方がない。この秋から通信教育を再開することにした。もう受講料も振り込んだから、やらねば!翻訳書も無事9月に出版されることになったし、当分、お勉強を楽しむとしよう。
でも、その前に夏休み。うふふ。初めてブルターニュへ行く。みんな、「きれいなところだよ」「食べ物がおいしいよ」と言うが、好き嫌いの多い私はちょっと不安。臓物も苦手なんだけど、北フランスはなにやらその辺が得意そう…。こわいかも。
旅行へ行く前にはよく一眼レフが欲しくなる。たぶん、私には今のデジカメでも十分なんだろうけど。一眼レフ、欲しいけど、重い。そんな風に思っているうちはきっと買わないんだろう。本当にカメラが好きなら、とっくに買っているはずだもの。
先週末、アッペンツェル地方へ出かけた。夫が小さい頃、夏休みによく来ていた地方だ。私もスイスへ来たばかりの頃に1、2度訪れているらしいが、ほぼ記憶にない。写真はウルネシュという村。冬のお祭りで有名な村だ。窓辺をゲラニウムで美しく飾った建物は典型的。 |
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2009年9月13日
不安はみごと的中。 石造り、あるいは壁に木がはめ込まれた建物が美しいブルターニュでの初めての夕食。サン・マローの町をぶらつくとあちこちで見かける「Fruit de Mer」の文字。これはやっぱり頼まなくては、ということで2人分を注文したら、茹でられたあとすでに冷たくなった種々のエビや貝に混じってさっそく生牡蠣登場。わたしは生ものはまったく駄目なので夫にすべて譲ったけれど、彼も「ぜんぜんおいしくない」と言う。一番上にでんと乗っかったカニもあまり食べるところはないし、エビも特においしいとは思わなかった。ま、いいか。何ごとも経験。
レンヌの旧市街。ゆがんだ建物もたくさん ブルターニュの北の方。あじさいの花があちこちに
2晩目。夫は肉を食べると言うので、わたしも何かないかと探す。ステーキは苦手だし、あ、でもこの仔牛なら大丈夫かな。フランス語でよくわからないけど、ポルトワインを使ったタリアテッラか。いいんじゃない?と注文。でもそのあとに、ポルトワイン?ひょっとして…、と疑惑浮上。しばらくして出てきたお皿には、やっぱりマッシュルームみたいなものがたくさん乗っかっている。1つだけ恐る恐る食べ、夫にも試してもらったけれど、これはやっぱりレバーだ。ああ、だめ。パス。何ごとも経験?
周囲ではみんなムール貝&フライドポテトを食べている。昔よく手伝いで、アコヤガイを入れた網にへばりついたムール貝の小型版を必死で掃除した。食べるなんてとんでもない。もうたくさんです。それに、それほどおいしいとも思わない…。
有名なクレープやガレットはいい匂いがしておいしいけどバターたっぷり。これまた有名なリンゴ酒と一緒に味わっても、せいぜい3回が限度。魚もバターたっぷりのムニエル…。あちこちのお店で売られているクッキーやキャラメルが入る余地はもうありません。日ごろ、軽めの食事をしているんだなあとつくづく実感。
サラダは新鮮でおいしい。でも、みなさんフォアグラやら砂肝やらがお好きなようで、フツーのサラダを探すのは結構たいへん。好き嫌いが多いとほんとにソンです。結局、わたしがブルターニュでおいしいと思ったものは、サラダ、フランスパンのサンドイッチ、最後にレンヌの旧市街で食べたピザ。舌平目のムニエルとアイリッシュカフェもおいしかったけど、重い~。
一番思い出に残っているのは、干満の差が激しい海岸を裸足で歩いたときの心地よさ。ちょうど潮が満ち始めるときで、粘土のような地面の上を海水が静かに流れる中、30分くらい歩いたのかな。足の裏が程よくマッサージされて
おもしろかったのは、フランス・ドイツ・スイスが共有する小さな飛行場からレンヌに飛ぶ飛行機がすっごく小さくて、行きのはまっすぐ立てないくらいで定員はたぶん10人くらい。帰りのはもう少し大きくて20人くらい乗れたと思うけれど、どちらもトイレなし。飛行時間は2時間。おなかの調子が悪くなくてよかった。
限りなく遠浅。こういうところを岸に向かって延々と歩き続けた |
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2009年10月19日
昨日、ボリスが突然姿を現した。何ヶ月ぶりだろうか。春以来かもしれない。夫と「引っ越しちゃったのかなあ」と時おり話していた。もう、会えないのだろうと思っていた。でも、ボリスは昨日もうちに来ていたかのようにふらっと現れて、鼻先をわたしの鼻に摺り寄せて挨拶し、夫の足元にすりすりして、しばらくしてまたどこかへ行ってしまった。
「夏の間、どこかの農家で暮らしていたのかな」なんて夫は言う。でも、ネコは家に棲むもの。農家に預けられたりしたら、それこそ逃げ出してシュールのように迷子になってしまう。今日もボリスはほんのひと時だけ挨拶に来た。明日もまた来るのだろうか。
今日はお隣さんご夫婦が北朝鮮へ旅立った。ご主人が開発協力の仕事をしているのだ。一応1年間アパートを又貸しすることにしたので、家財道具をほとんどすべて倉庫に送ったあとのがらんどうの部屋でちょっとおしゃべりをしたときに、冷凍庫に入っていたルワンダのチリをたくさん貰い受けた。彼は以前ルワンダで仕事をしていたのだ。ルワンダのチリは丸くって小さくって上品な香りがする。
彼らが北朝鮮にいる間に「必ず遊びに行くからね」と約束して、お別れ。実現できるといいな。 |
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2009年11月4日
ボリスはあの2日間、ちょこっと遊びに来ただけでまた来なくなってしまった。いったい今、どこで何をしているんだろう。
この数日は天気が悪い。雨が多く、風もけっこう強かったりする。広葉樹はもうすっかり秋の色になり、陽を浴びて金色に輝いていたけれど、今は芝生や歩道を埋め尽くしている。その落ち葉の上を歩くのがけっこう好き。カサカサ、ときどきシャリッと乾ききった落ち葉を踏み潰して歩く。でも、もっと好きなのはポツン、ポタン、ポタポタと大きな音を立てて雨を受け止める落ち葉の上を歩くこと。先日、久しぶりにそんな歩道を歩いた。心に心地よく響く音に耳を傾けながら。
好きな音はいくつかある。昔のテレビドラマでよく響いていた靴音。おばあちゃんが引いていた乳母車の車輪がカタコトと地面の上を回る音。小川のせせらぎ。静かな波が浜辺に打ち寄せる音。傘に落ちる雨音。そろばんをはじく音。遠くで聞く車のドアを閉める音とヘリコプターのパタパタという音。まつぼっくりが開く音を聞くと「ああ、春が来たんだなあ」と思う。この音は今のアパートに引っ越してきてから気がついた。古い木の床がギシギシと鳴る音。ピアノの音色。…まだ何か忘れているかも。
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2009年12月21日
寒かった。 この数日間は最高気温が氷点下。おまけに北風がびゅんびゅん吹き、これでもか!と雪まで降った。もう少し寒い日が続けば久々のロマンチックなホワイトクリスマスになるのだろうけれど、天気予報は容赦なく「気温は上がり、平野部では雨」とのたまう。しかたがない。それに、ホワイトクリスマスだからといって何か特別なことをするわけでもない。ま、いっか。
ここ数週間は夜よく家を空けた。さすが年末。日ごろ家にこもりっきりのわたしですら、これだけ外出するんだものね。忘年会、クリスマス会という名の外食が重なった。気のおけない友達とゆっくり話し込みながら、また大勢でワイワイとやりながら過ごす時間はやっぱりいい。これから大晦日までは、夫とともに自宅に招いたり招かれたり。
今年も1年、いろんな出会いがあった。さまざまな年代のさまざまな夢を持った人たち。わたしは1年ごとに肩の力が抜けていくような気がする。より素直に感嘆し、敬服できるようになったような気がする。もちろんアマノジャクもまだ時々ひょっこり顔を出すけれど。
チューリヒの高台から市内を見下ろす。手前は一坪農園の小屋 |